先生が来ると元気になる

三輪 誠

褒めて育てるという言葉があります。
医者も褒められて育ちます。

そのおばあさんの往診はなぜかこちらがリラックスしている夜に多いのでした。
その理由は夜の冷気で喘息発作が出るからです。

いつものように車を運転して、側道に入り夜の闇をそろそろと運転していきました。
敷地に入ったところでその日は庭先にパッと明かりがつき、家の人が迎えに出てきました。
わざわざ私の夜間往診用に取り付けた照明だそうです。
(ヤレヤレ、夜のお呼び出しは長く続ける予定のようです)

さてさてどんなに苦しがっているかとそそくさと部屋に入ると、おばあさんは何の苦しみもなく寝ていました。

そんなことが何回か続きました。

そのたびに言われる言葉が、
「すごい、先生が来ると必ず治ってしまう」
「先生の車の音で治ってしまう」
「おばあさんは先生を絶大に信用している、だから注射の前に治ってしまう」というものでした。

豚もおだてりゃ・・で私も悪い気はしません。
何回も呼ばれるたびに往診しました。

今思えば、往診医を育てるにはこの手が一番ですね。

後に息子さんから「立派なカラオケルームを作ったから来てくれ」と言われて行きました。
やっぱり庭の電気がパッとつきました。

その息子さんもその後ポックリ終わりました。