介護して気づいた親の愛

三輪 一太

90歳を超えた寝たきりの女性の患者さんのお話。

心臓が悪く、認知症もあり、寝たきり。食事、おむつ、清拭すべてに介助が必要な患者さん。腰痛持ちの娘さんがお世話をしている。こういう状態になって約1年。1年前往診を始めた当初、状態が悪くなり、余命あと数日ですね。とお話をした時もあったが、奇跡的に乗り越え1年も今の状態が続いている。良くもならない。悪くもならない。

 

娘さんの介護は完璧だ。介護を勉強し、ちょっとでもよいことはどんどん取り入れている。献身的だ。完璧な介護により、明らかに寿命が延びている。病院や施設では、すぐに亡くなるだろう。完璧すぎて正直大変なんじゃないかと思うときもある。

ある往診した日、ふとしたお話の中で「先生、若いころからなんでもかんでも自分の意見を押し付けてくる母がいやで随分反発したときもありました。そんな性格の母がついこの前までそんなに好きではなかったです。」ということを言った。

 

衝撃的だった。こんなに献身的で完璧に介護をしているのだから、当然親子関係が良かったのだろうとずっと思っていた。

娘さんは続けて言った。「母を介護するようになり、オムツをかえたり、食事をとらせたりいろいろお世話する中で、ああ。母は自分が小さい頃こうやって命がけで私を育ててくれたのだ。ありがたかったなあ。という気持ちになりました。介護を通じて、親の愛を再認識できたのです。今は母が愛おしくて仕方ない。」とにこにこしておっしゃっていました。

 

大変な状態が思ったより随分長くなってしまったけど、介護をそういう視点から見ることができる娘さん。立派だなあ。目頭が熱くなった。