家に帰ってのびた命

三輪 一太

在宅ではしばしば奇跡がおきる
往診を始めてもう何年かたつが、在宅でたくさんの奇跡をみてきた。その中の一つのお話。

「ガンで黄疸がひどく、家に帰っても余命は2週間以内でしょう。もう高齢で根治も難しいので最期は家で看ますか。」患者さんは病院の先生からそう言われて私の往診が始まった。

昔から三輪医院がかかりつけであり、私も最期まで責任をもってみてやるぞ。と気合が入っていた。もともと私は週に1回くらい自分が入院させた患者さんを病院まで回診に行くようにしており、状態は把握していた。確かにこのままいけば余命は病院の先生がおっしゃるように良くて2週間とおもっていた。

いつも通り自分の携帯番号を教え、24時間体制で本人、ご家族の不安がないよう、苦しみがないよう気をつけた。しかし、宣告された2週間たっても元気である。食事も食べている。そしてなにより、大好きなデイサービスにも行けている。黄疸も少し良くなっている。ひ孫や孫に囲まれながら、尊厳をもってしっかりと「生きて」いた。結局デイサービスも2が月通うことができた。元気なころよりデイサービスが生きがいとなっており、末期になっても日中休憩することもなく、他の利用者さん同様の活動をしていた。デイサービス職員には「何かあったら私が責任をとるから、是非預かってほしい」とお願いをしていた。三輪医院グループのデイサービスは医者が後ろに付いているから状態の悪い方も預かってもらえる。

上品で、やさしく、穏やかな人だった。往診すると、寝ていたのに、椅子にすわられて、「遠いところ来てくださり、大変だったでしょう。いつもわるいねえ」と気遣ってくださったのが、患者様の人格を表しているようで、印象的だった。そんな患者さんだから家でも大変大事にされていた。

結局当初の予定の12倍の3か月生きた。最期は3世代にわたる家族、兄弟、本当にたくさんの人に見守られながら、美しい看取りだった。私の大好きな岡部のなかでも最も美しい景色の中で。最期は希望どおり家で亡くなることができ、私も長年の主治医として、責任を果すことができて幸せだった。

家に帰ると、精神的、免疫的パワーが強まるのか、ガン末期でもかなり長生きするかたが多くみられる。奇跡が起きる。と言い切れる。在宅医療は家で看取るための医療ではない。家で生きていくための手段である。