寝たきり老人力

「こんな年寄りになってしまって、何の役にも立ちません。」「早く死んだほうがましです。」そんなことをいうお年よりがいます。ほんとうに何の役にも立たないのでしょうか。

その人は脳の外傷が原因で寝たきりでした。退院した直後は杖をついてリハビリをしていましたが、やがて動けなくなり、しゃべらなくなり、ついには鼻から管をいれて生きていくことになりました。管を入れる時は随分と家族と話し合いましたが、「このまま終わるじゃあかわいそう。」という奥さんの一言で管が入りました。

それからまた長く寝たきり生活が続きました。体はますます衰弱し、骨と皮になってしまいました。

「困ったよ、こんなになっちゃって。早く終わったほうが良かったかしら。」とか言いながら、奥さんはかいがいしく看病していました。

そしてついに最期の日がきました。

「先生、いろいろありがとうございました。おかげで無事に終わりました。でも不思議です。孫が急に介護の学校へ進学すると言い出しました。」と嬉しそうでした。
寝たきりになりながら必死に生きようとしたおじいさん、最期まで夫を見つづけたおばあさん、かげで支えたお母さんとお父さん、それらをそっと見ていたお孫さんが介護の道を志したのです。
私はおじいさんが「寝たきり老人力」を発揮したためでしょうと説明しました。